矯正:トレビシ・システム

 2019年4月21日、東京、品川、快晴です。会場はソニー本社の、道路隔てて,すぐ隣というロケーションでした。本日はブラジル、サンパウロ郊外で矯正専門医として開業されているMBTシステムの開発者の一人であるHugo Trevisi(ヒューゴ・トレビシ)先生のお話しを聴いてきました。
 トレビシ先生は来日前に既にベトナムで講演を終えられ、日本で講演された後、中国で講演予定とのことでした。

Dr Hugo Trvisi

Contents

MBTシステムの歴史

アンドリュースの勉強会にて・左がパンチパーマの若きマクローフリン先生、右が若き日のトレビシ先生

 初めに、現在、世界の矯正専門医の中で使用頻度が最も高いMBT システムの歴史のお話があり、大変興味深いものでした。
 そもそもMBTのコンセプトのルーツはアンドリュース のストレートワイヤーテクニックにあることは矯正専門医なら誰もが知っていることなのである。
 MBTのMは米国サンディエゴで開業しているマクローフリン先生であり、Bは英国のベネット先生であり、Tが今回来日したトレビシ先生なのである。
 元々この3人はアンドリュースのストレートワイヤーテクニックを臨床に導入するために米国で勉強してきた勉強仲間なのであり、3人でストレートワイヤーテクニックを臨床の中で中で使用する内に限界を感じ、新たなブラケットシステムを自分たちで開発し始め、それがMBTシステムとして1995年に矯正臨床に登場することになるのである。
 上記の写真を見ると現在のマクローフリン先生を知っている者にとっては隔世の感がある。パンチパーマのマクローフリン先生というのは、本当貴重な写真である。
 下記写真はもう少し後のMBT3人衆の写真である。

現在のMBTの3人の先生
現在のMBTの3人の先生

6Keys to Nomal Occlusion

 6Keys to Normal Occlusionという概念は筆者においても特別な感があります。
 筆者が1980年頃北大歯学部に在籍中、ある日の歯科矯正学の講義の最後に、担当の中村教授からクラス全員(1学年32人の少人数クラス)に英文の文献が初めて配布されたのが、アンドリュースが書いた6Keys to Normal Occllusionであった。全員次週までに読んで理解するようにとのことであった、
 当時としては、アンドリュースの歯科矯正学の最新概念であったが、当時の学生達には、その臨床での重要性がまだ充分理解できなかったというのが正直な所である。
 今から思えば担当教授が、これからは必ず矯正臨床は、この方向へ進むので、是非若い我々学生に学ばせたいという親心というのが理解できる。
 その当時の最新のトレンドに乗ったMBTの3人はアンドリュースのストレートワイヤーテクニツクのコンセプトと臨床を米国で学び、それを遂行する臨床過程の中の葛藤と創意工夫でMBTシステムは生まれてきたのである。

14Ideas+6Objects

現在のMBTテクニックは、6Keys to Normal Occlusionの概念を更に拡大した6Objectsを提唱している。

  1. Condyles positioned in comfortable central functional relation
  2. Relaxed muscles
  3. The six keys for normal occlusion
  4. Ideal Functional Movements – mutually protected occlusion
  5. Periodontal health
  6. better aesthetics possible

更に上記を達成するための臨床上の14Ideasを推奨している。

  1. Bracket selection
  2. Bracket system versatility
  3. Accuracy in bracket positioning
  4. Light continuous force
  5. Slot0.022″ and Slot0.022日8″
  6. Anchorage control early in treatment
  7. Individual movement of cuspids in aligning stage
  8. Group movement in space closure
  9. Use and sequence of three arch forms
  10. Individualization of arch form at the end of treatment
  11. One size of rectangular steel wire
  12. Hooks and slide mechanics
  13. Awareness of tooth size discrepacies
  14. Persistence in finishing

上記の二つの事項は、今さらという感はあるが、常に臨床の中で意識して実行しなくてはいけない大切なことばかりである。

新しいMBTシステム

 今回トレビシ先生が来日講演することになったのは、フォレストデント社が新しいMBTシステムをトレビシ先生と一緒に開発し、それを市場に販売することになったためです。
 Self Ligation Bracket の利点と欠点を十分解析した上で、更に歯牙移動のスピードを上げるためには、ブラケットの設計に何を加えれば良いかということが、今回の講演の一つの核となっていました。
 トレビシ先生曰く、新しいシステムは旧来のシステムより10ヶ月位早く治療をおわらせれるようになっているとのことでした。
 当院でも、このコンセプトを生かし更に快適で速い矯正治療を行いたいと考えています。