歯の神経の治療を何か月もやっているが、歯の痛みや根の先の腫れが治らなくて困っている。
歯の神経の治療をすれば、その症状が消えると患者さんも歯医者さんも信じて止まないが、何かが間違っている。
Contents
歯の神経の治療で一番大切なのは術前の診断
歯の神経の治療で一番大切なのは、歯の神経の治療を行う前に、治療しようとしている歯の治療後の治りがどの程度の成績なのかを、歯を削る前に診断し、患者さんと情報共有することです。
下記は米国の歯内療法学会(American Academy of Endodonyics:AAE)が提唱している歯内療法の予後の見通しを改編したものです。
分類 | Class1 | Class2 | Class3 | class4 | class5 |
歯の神経の治療の成功率 | 90%以上 | 80%前後 | 60~70% | 期待できない。やってみないと解らない。 | 成功の見込みは殆どない |
病態 | 歯の神経が当院来院時生きていたケースで、今回初めて神経の治療をする場合。または神経が死んでいるケースで根の先に病変が無いケース | 神経が死んでいるケースで根の先に病変があるケース | 既に一度以上過去に歯の神経の治療を実施したことがあるケース | 根の先の病変以外にも問題があり治療が難しいケース | 歯の虫歯の量が大きく保存不可能なケース。或いは、歯の根にヒビ割れがあり、冠を上に被せられないケース |
治療の選択肢 | 一般的な根の神経の治療→予後不良の場合は外科的な歯の根の先の処置 | 一般的な根の神経の治療→予後不良の場合は外科的な歯の根の先の処置 | 一般的な根の神経の治療→予後不良の場合は外科的な歯の根の先の処置 | 診断的治療或いは放置又は抜歯 | 抜歯または放置 |
最新の器材を用いて治療を実施しています
当院では、世界標準の治療を実施するため、最新のNiTi製器材で治療を行っています。
またケースによりCTの撮影、顕微鏡の使用を行い、精度の高い治療を実施しています。
これにより大幅な治療時間の短縮と治療精度の向上を計ることが可能になりました。
痛みは本当に歯の神経が原因?
顔や口、アゴの関節や歯の痛みは、原因がいろいろあり、歯や歯茎だけがその原因とは限りません。歯や歯周病の治療をしても痛みが治らない場合は、痛みの原因をもう一度正しく診断する必要があります。
特に歯の神経の治療の場合、根の先の状態は根の先が骨の中にあるため、直接見ることができません。
ですので、既往歴・レントゲン・各種の臨床診査をして、間接的に根の先の状態をできるだけ正確に予測することが必要です。
また、痛みが歯の神経から来たものではなく、周囲の筋肉や上顎洞の炎症、脳そのもの異常(脳腫瘍etc)由来の痛みを歯の痛みとして誤認識している場合も多く、痛みの原因を正しく診断することが最も大切なことです。
通常の歯の神経の治療の流れ
歯の神経が生きている場合と既に一度治療を受けてある歯の神経を再度治療する場合のケースについてお話します。
歯の神経が生きている場合
歯の神経が生きている場合は、歯の神経が保存できないと判定される場合、歯の神経をとることになります。
- 歯に麻酔します。
- 歯の神経を取ることを行います。根の数が複数ある場合は、何回か回数をかけて、神経の除去を行います。
また、加齢により歯の神経が入っている所が、ものすごく狭くなっていたり、石のように石灰化している場合は、ここでかなり時間がかかることがあります。 - 神経が入っている管(根管と言います)の上の出口をきれいに開けて、良く見えるようにします。(アクセスオープニング)
- 根管の先端まで、細い針みたいなもの(ファイルやリーマーと言います)で、通過できるように慎重な操作を行います。ここが一番難しい操作です。 (ネゴシエーション)
- 根管の先まで、ファイルがスムーズに通過できるように根管内壁にファイルでカンナをかけます。(グライドパス)
- ファイルで、根管内をクリーニングできる大きさまで、根管を大きくします。(根管形成)
- 根管内の汚れを数種類の薬剤を用いて、何回も洗浄します。
- 根管内を乾燥し、水酸化カルシウムを根管内に塗布します。
- 根管を仮の詰め物で封鎖します。
- 日を改めて、根管内をゴム状の薬で充塡・閉鎖します。
- この後、冠を被せる処置に移ることが多いです。
一度治療された歯の神経の再治療をする場合
既に歯の神経が死んでいる、或いは一度歯の神経の治療を終えている場合、根管内の細菌の汚染がかなり進んでいたり、元々の歯の根の先端の解剖学的な形態が破壊されている場合等、歯の根の治療の成績は、初めて神経を取る場合に比較して、どうしても悪くなります。
特に根の先端の形が破壊されている場合は、外科的な処置を併用しないと、根の先端の細菌感染を除去できない場合が多くなります。
- 歯に麻酔します。
- 歯の神経の中に入っている異物を除去することが多くなります。
大多数はゴム状の材料を除去することになりますが、根管の壁にこびりついているため非常に時間と手間がかかります。
また、加齢により歯の神経が入っている所が、ものすごく狭くなっていたり、根管の途中で、根管が石のように石灰化している場合は、ここでかなり時間がかかることがあります。 - 神経が入っている管(根管と言います)の上の出口をきれいに開けて、良く見えるようにします。(アクセスオープニング)
- 根管の先端まで、細い針みたいなもの(ファイルやリーマーと言います)で、通過できるように慎重な操作を行います。ここが一番難しい操作です。 (ネゴシエーション)
- 根管の先まで、ファイルがスムーズに通過できるように根管内壁にファイルでカンナをかけます。(グライドパス)
- ファイルで、根管内をクリーニングできる大きさまで、根管を大きくします。(根管形成)
- 根管内の汚れを数種類の薬剤を用いて、何回も洗浄します。
- 根管内を乾燥し、水酸化カルシウムを根管内に塗布します。
- 根管を仮の詰め物で封鎖します。
- 日を改めて、根管内をゴム状の薬で充塡・閉鎖します。
ここで、予後が不良な場合は、外科的に根の先端をクリーニングすることを考慮します。 - この後、問題が無ければ、冠を被せる処置に移ることが多いです。
歯の神経の治療における難症例の取り扱いについて
歯の根の先に袋状のものができ、膿がたまり、骨が溶けたり、歯茎が腫れたり、歯茎から膿が出ることが臨床の現場では起こります。
特に、一度根の治療をしたにも関わらず、このような症状を呈する場合が、臨床の現場では、しばしば生じます。
このようなケースの場合、通常の根の治療だけでは、根の先の病変を直すことが不可能な場合があります。
病変が根の周囲の骨にまで移っている場合や細菌が根の先の更に骨の奥深く入ってしまっている場合、また、それまでの根の治療で根の先端の元々の解剖学的な形態が失われている場合等、通常の根の治療では根の先の腫れや痛みは収束しません。
このような場合
- 歯の根の通常の治療を実施
- 治療経過の中で、腫れが収束しない、膿が出るのが収まらない
- CT等レントゲンで病変部を精査する。
- 根の先の病変部を顕微鏡下でクリーニングし、根の先を薬剤で閉鎖する外科的な処置の実施を考慮します(歯根端切除術)*ご注意・稀に歯の根に縦割れが生じていることがあります。その場合は状況により、同部を保存的に処置するケースと止もうえず抜歯となるケースがあります。
*当院ではCT撮影と強拡大率の医療用顕微鏡を使用し、根の先の外科処置の治療精度を高めています。
そのためオペの侵襲を極力抑えた、いわゆるマイクロサージェリーを実施し、術後の腫れや痛みを最小限にすることを心掛けています。
お気軽にお問い合わせください。0584-81-56609:00~12:30/14:30~19:00[ 木日祝除く ]