子供の矯正治療で大切なのは装置の継続的な使用はもちろん大切であるが、それ以上に大切なのは、正しく鼻で呼吸し、上下奥歯を接触させながら、舌を正しく使って嚥下する機能を獲得することなのである。

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口呼吸がとても良くない

 口で呼吸することが、子供の歯並びをひどく悪くします。
 人間は、通常鼻で呼吸しています。このとき舌の上面は上顎の骨と軽く接触し、上顎の骨や歯の内側に軽い圧が加わっています。
 また、食べ物をかみ砕き、嚥下する時には、奥歯を軽く摂食させ、舌の奥の所を使って、ドロドロになった食べ物を上顎に強く押し付け、喉の奥に送り込んでいます。
 この時に、上顎の骨には舌から側方と上方へ、グッと力が入ります。こうすることで、上顎の骨は奥にも横にもきれいに成長してくるのです。

異常な嚥下とは?

 口呼吸を行っていると、舌の上顎を押す力がとても弱くなり、正常な嚥下ができなくなります。こうなると上顎の幅は狭くなり、必然的に横幅を合わせて咬むために、下顎は後ろに下がらざるをえなくなります。
 さらにこれが進むと、嚥下をする際に下顎を後ろへ下げながら、舌を上下前歯の間に入れ、嚥下するようになります。いわゆるリバース・スワローReverse Swallowと言われる現象です。

 このような嚥下が常態化してくると、顔は面長になり、常に舌が上下前歯に入るために上下前歯が重なり合わない、いわゆる開口になってきます。
 また、常に下顎を後退させながら嚥下するために、下顎が後退し、いわゆる出っ歯の顔貌になってきます。
 嚥下は通常1日500回程度行うと言われています。いかに、正常な嚥下や口での呼吸が、顔の成長発育に重要かが理解できると思います。

早期の子供の矯正治療の重要性

 早期の子供の矯正治療で一番大切なのは、正しい鼻呼吸と嚥下を獲得することです。
 これが達成できれば、子供の矯正治療の目標の8割を達成できたと考えていいでしょう。
 正しい呼吸と嚥下は成人になっても、美しい顔貌と歯列を維持します。

歯科医院での機能改善・治療の概要

 まず基本的な矯正治療前の精密検査を行うことが第一です。これにより、ケースの問題点を明確化します。
 耳鼻科的な問題(鼻の穴の狭窄・アデノイド肥大による気道の狭窄等)のスクリーニングや機能訓練の前に矯正装置を適用すべきなのかを判断します。

  • お口全体の歯のレントゲン写真
  • お顔と頭の頭部X線規格写真
  • お口・歯とお顔の写真

 上顎の横幅が狭くなっている場合は、予め上顎の急速拡大装置等(HyluxやRPE)を適用して、上顎を側方へ拡げると同時に、その真上にある鼻腔の容積を拡大し、鼻呼吸をしやすい環境を作ります。
 この後、鼻呼吸のための正しい姿勢の取り方や、正しい鼻呼吸の方法等を医院のスタッフと共に、ピアノのレッスン形式で覚えていき、自然と日常でそれが達成できるようにします。
 それと並行して、鼻呼吸を促し、歯列を正常形態に近づけるための矯正装置を装着してもらうようにします。
 さらに舌の位置の訓練も大切で、物を飲み込む時、奥歯を軽く接触させながら、奥舌を使って飲み込むための訓練を実施します。