東海歯科医療管理学会

健常者と高齢有病者の嚥下部位のMRI

 2019年9月8日午後より岐阜県歯科医師会館にて、第24回東海歯科医療管理学会の総会・学術大会が開催されました。
 メインテーマは「高齢者の口腔と摂食嚥下の機能維持・向上」で、特別講演Ⅰは「歯科医院で出来る摂食嚥下障害への対応」というテーマで、大阪歯科大学の糸田昌隆教授、特別講演Ⅱは「口腔機能低下症の検査・診断・治療:オーラルフレイルから口腔機能低下症まで」というテーマで、昭和大学歯学部の佐藤裕二教授の講演がありました。

糸田教授のお話

 高齢者の食を考える場合に、まず何を誰とどのように食べるべきなのかを念頭に置いて治療を考えていくべきである。
 誤嚥性肺炎は、我々が想像するよりも、遥かに発生頻度が高い。ガンや脳血管疾患の症例も、最期は誤嚥性肺炎が致命的なダメージとなり亡くなるケースが多い。
 また嚥下時の誤嚥による窒息死も増加しており、奥歯の咬み合わせが無いケースや、高齢者が一人で食事している場合などに多く見受けられる。
 特に高齢者の場合、気管に唾液が流入しても、ムセやセキが出ないで、これが肺炎のもとになる、いわゆるSilent AspirationやMicro Aspirationが生じやすい。

嚥下運動時の口腔期と咽頭期の経時的な器官の動き
1. 舌骨の固定(前上方)にともなう喉頭の挙上
2. 舌圧による嚥下圧の発生
3. 鼻咽腔閉鎖・上咽頭収縮筋の収縮・咽頭挙上の開始
4. さらに喉頭の挙上
5. 喉頭蓋の反転・中咽頭収縮筋の収縮
6. 下咽頭収縮筋の収縮・食道入口部の開大と閉鎖

誤嚥の臨床所見
◎ 食事中、食後に むせ や咳が多い
◎ 肺炎 (発熱)を繰り返す
◎ 食後、 湿性嗄声 がある
○ 夜間に咳き込む
○ 拒食 がある
○ 食事時間が 1時間以上 かかる
○ 口腔内に食物が残っている
○ 脱水、低栄養状態
□ RSST 不可

摂食・嚥下障害リハビリテーションの基本的な流れ
摂食・嚥下機能評価(スクリーニング)
摂食機能療法診療録作成、評価表、訓練計画書作成
専門的検査( VF 検査,内視鏡検査等による評価)
摂食・嚥下訓練
栄養法の決定 ビデオ透視検査 etc 訓練効果の確認、食事形態の決定など)
観 察

スクリーニング検査
1.反復唾液のみテスト( RSST
30 秒で 2 回以下で問題あり
2.水飲み テスト 改訂水飲みテスト
30mlの水 を一気に飲み込む. 5秒以内にムセなければ 正常
3.嚥下音(頸部聴診法)
嚥下時(前・後)の 吸気音の変化 を確認
4.食物テスト
ティースプーン1杯(3~5g) のゼリー・プリンを嚥下し 30秒観察 .嚥下の有無・呼吸の確認
5 .咳テスト(不顕性誤嚥の有無の評価
ネブライザー の クエン 酸( 1%) を口 から吸って もらい 30 秒以内に咳 が出るかどうかを評価

嚥下障害の治療法
経管栄養法 一時的に 胃瘻を中心とした経管栄養法 を
用い 経口摂取へと移行する方法.
訓 練 間接訓練法 と 直接訓練法 に分類され,低
下した嚥下機能を回復させる方法.
外科的手術 機能補助的手術法 と 誤嚥防止術 の2法に
分類される

佐藤教授のお話

平成30年春の社会保険改訂から臨床に導入された口腔機能低下症の検査・管理について、社会保険診療の臨床の中でどう取り入れるべきかのお話がありました。

 これから団塊の世代が後期高齢者を迎えるにあたって、従来の歯の大工的発想・行動パターンから脱却し、摂食嚥下機能を核とした老化現象の機能を客観評価する必要性について、佐藤教授が熱く語られました。
 極めて重要な課題ですが、これを理解して実践できる歯科医師は極めて少ないのが現状なのである。