根尖部が開いている難症例への対応(歯の神経治療)

 2019年9月22日(日)大阪・梅田において、ドクター・ブック主催の歯の神経の治療における難症例である、根の先端がラッパ状に開いている種々なケースに対して、臨床的な対応をどうすべきか、3人の専門医の先生による講演がありました。

Contents

吉岡先生のお話

 まず初めに広島市で開業している自費専門の歯内療法専門医の吉岡先生が、なぜ難症例が臨床の現場で生まれてくるのか、その原因を解説した。

 現在の最新の根管治療の概念の中では、根尖狭窄部は存在しないというのが定説になってきているが、巷では依然、根尖狭窄部が存在しているとして神経の治療にあたっている歯科医師が殆どである。
 従来は、未治療の歯において、根尖部が開いているイコール根尖が破壊されているという考えであったが、現在の新しい概念では元々根尖孔のサイズが大きいと考えるのが妥当である。
 一度、歯の神経の治療を受けて根尖孔が開いているケースは、殆どが医原性のものである。
 そもそも、神経の入っている根管は殆どのケースでカーブしており、この中を太い直線的な器具で、先端部をゴリゴリ削れば、当然、根の先端部の穴の形は側方へ偏位し、器具が未到達の部分が増大するばかりではなく、感染の残存部が増大することになる。(トランスポーテーション)
 こうなると、医原的な感染増大部が残存して、さらにゴリゴリより太い器具で清掃を繰り返しても、感染部がますます増大するばかりである。
 対策のポイントは、多くの歯科医師が拡大と称してやっている器具のサイズをより太くするのではなく、細い器具の先端を小さく屈曲(プレカーブ)して、根管のカーブ内弯曲部の根尖部の壁を細かくクリーニングする必要性がある。
 さらに、このようなケースでは、根尖部に肉芽様の軟組織が欠如しているケースがあり、これは顕微鏡下で必ず確認し、水酸化カルシウム等の貼薬下に軟組織の再生を確認してから、最終の根管充填操作に移るべきである。
 また現在の根管洗浄のコンセプトが解説され、根管洗浄を的確に行うことは、臨床の中では、器械的な根管形成と同等の重要な意味合いを持つことに言及された。

須藤先生のお話

 続いて仙台で開業しており、国立東京医科歯科大学歯学部で吉岡先生と同期の須藤先生のお話です。

 須藤先生は、小児期に時々見受けられる、下顎小臼歯の中心結節の破折による小臼歯歯根未完成歯における根尖開口歯をどう治療するべきなのか、従来法であるApexogenesis、Apexificationと最近話題の歯髄の再生(Regenerative Therapy)療法について、統計学的データを駆使して解説された。
 結論から言ってしまえば、従来法との統計学的差異は余りないというのが答えである。
 さらに各種MTA材料の臨床的比較がなされ、大変臨床に寄与する情報であった。

木ノ本先生のお話

 次は、大阪の吹田で開業されている木ノ本先生のお話です。木ノ本先生は国立大阪大学歯学部付属病院で長年歯の神経の処置の専門医として活躍されていた業界の著名人です。

 木ノ本先生のお話は、医原性に歯の根尖部が器械的に拡大されて、痛みや腫れが引かないケースをどう臨床で治療するのかという、具体的なお話です。
 木ノ本先生も根管のカーブ形態を意識して、まず根管内の汚染・感染部を可及的に除去し、その後は3ヶ月程度の長期の水酸化カルシウム製剤の根尖部の留置によって、根尖部に薄い硬組織を形成させ、その後、最終の根管充塡に移行するというものでした。